大学入学共通テスト「日本史」研究

共通テスト日本史B

2020年度(2021年1月実施)

各科目の平均点を同じにしなければならない。

 共通テスト改革では、地歴科各科目(世界史B・日本史B・地理B)の平均点を同じにする調整か、偏差値を得点にするか、最低でも平均点に5点以上の差(2~3点以内に留めるべき)がついた場合は得点調整をするかのいずれかの対策を取らなければならない。現状の20点の差で得点調整は無責任の極みである。

 公正・公平な入試は、このことに尽きる。

 

 2019年度(2020年1月実施)でセンター試験が終わり、2020年度(2021年1月実施)から共通テストに移行する。

 新学習指導要領は2022年度1年次から年次進行ではじまり、新学習指導要領(「日本史探究」・「歴史総合」)による共通テストは2024年度(2025年1月実施)から始まる。地歴科は2025年1月実施の共通テストから記述式が導入される予定である。

 2020年度から2023年度(2024年1月実施)までは旧学習指導要領の下での共通テスト「日本史B」・「日本史A」となる。

 この期間の試験時間はセンター試験と同じ60分なので、知識・理解に加え、思考力・判断力を重視すれば出題の形式や出題の内容が変わるので、問題数を少なくしなければならない。

 平均点のターゲットは、センター試験の65点から思考力の重視に伴い60点に下がるのではなかろうか。

 新学習指導要領による2024(R6)年度共通テストの地歴科は、「歴史総合」「日本史探究」、「歴史総合」「世界史探究」、「地理総合」「地理探究」の組み合わせが想定されている。

2020.10.22最終更新

 

令和3年度大学入学共通テスト問題作成方針

 文部科学省の問題作成方針は次のボタンをクリックして確認してください。

センター試験を敷衍した、知識・理解に加え、思考力、判断力、表現力を問う問題が出題されます。

また、「主体的、対話的、深い学び」(アクティブラーニング)に言及しています。

新たな出題形式

 新学習指導要領を踏まえ、以下の記載があり、組み合わせ式の解答や、正答が複数ある形式が出題されます。

第4 マーク式問題の新たな出題形式
○ マーク式問題の新たな出題形式として,いわゆる連動型の問題(連続する
複数の問いにおいて,前問の答えとその後の問いの答えを組み合せて解答さ
せ,正答となる組合せが複数ある形式)を「第2」に⽰す問題作成のねらい,
範囲・内容等を踏まえて,出題する場合がある。」

 

日本史A・Bの問題作成方針

 日本史A・Bの問題作成方針は以下の記載があります。

 

「(歴史(世界史A,世界史B,日本史A,日本史B))
○ 歴史に関わる事象を多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。⽤語などを含めた個別
の事実等に関する知識のみならず,歴史的事象の意味や意義,特⾊や相互の関連等につ
いて,総合的に考察する⼒を求める。問題の作成に当たっては,事象に関する深い理解に
基づいて,例えば,教科書等で扱われていない初⾒の資料であっても,そこから得られる
情報と授業で学んだ知識を関連付ける問題,仮説を⽴て,資料に基づいて根拠を⽰した
り,検証したりする問題や,歴史の展開を考察したり,時代や地域を超えて特定のテーマ
について考察したりする問題などを含めて検討する。」

 

2020.6.12最終更新

 

日本史の問題作成の方向

2020年1月実施センター試験日本史Bから

 2020年1月実施の問題から共通テストと連関する問題例を挙げてみた。

 

【解答番号28】

 「(前略)ⓒ[民権運動が行きづまると急進派の民権派が加波山事件や大阪事件などを起こし]、さらに同時期の不況によって困窮した民衆が、民権家と結びついて蜂起する場合もあった。」

 

 下線部ⓒ([ ]の部分)が発生していたのと同じ時期に起きた出来事に関して述べた文として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

①太政官制が廃止され、新たに内閣制度が定められた。

②洋画の分野で二科会が創立され、文部省美術展覧会(文展)に対抗した。

③三菱(三菱会社)と共同運輸会社が合併して、日本郵船会社が設立された。

④朝鮮で甲申事変(甲申政変)が発生し、清軍によって鎮圧された。

 

 ①~④が激化事件と同時期の政治、外交、経済、文化の選択肢になっていて、同時代の総合的な理解を求めている点が注目される。

 問題文からは、選択肢①~④のなかに下線部と異なる時代の選択肢が含まれているので誤っているのか、選択肢①~④は下線部と同じ時代だが、文章の中に誤っている部分が含まれているのかわからない。両者を検討して正誤の判断をしなければならない。

 民権派が関連した激化事件は福島事件、加波山事件、秩父事件、大阪事件などがあり、1880年代前半に発生した。「同時期の不況」とは、松方財政による増税と歳出緊縮により松方デフレと呼ばれる米・繭価が低下したことである。このため困窮した農民による秩父事件が起こった。

③・④の選択肢が下線部と同時期であると判断するのは、特に③はかなり難解で、激化事件と関連させて思考することも困難で単なる細かい知識の暗記ではなかろうか。また、③・④の文章に誤りがないか判断するのも簡単ではない。④は、壬午軍乱(壬午事変)、甲申事変という日清戦争に至る経過と内容をよく理解し、両者の区別ができないと正誤の判断が難しい。

 ②は、「二科会」が大正時代に「文展」に対抗して創立された美術団体ということを知っていなければ解答できない。「二科会」が「文展」に対抗して創立されたという問いはやや難しい。

 ②の「二科会」が大正時代に文展に対抗して創立された知識がないと難問となるが、「二科会」が大正時代創立という知識があれば簡単に正答が得られるので、単純で、単なる暗記問題になってしまっている点が共通テストの問題としては課題である。

 したがって、これが正しいものを選べという出題にして、①・③・④の選択肢の中に、「二科会」のように同時代でない政治、外交、経済の選択肢を入れたり、選択肢③を松方デフレに関連した文にして誤りを入れると、歴史の総合的思考が必要になり、共通テストの問題として適切な問題に仕上がるのではなかろうか。

 

 「二科会」の知識で単純に解答できる点は問題であるが、全体としてやや細かい知識の理解を求める問題である。同時代の政治・外交・経済・文化の総合的理解を問う面で工夫された問題だが、正答は「二科会」の知識・理解によって簡単に求められ、選択肢相互の関連性を思考する問題になっていない点が課題である。経済の選択肢は、日本郵船会社に関する出題より、松方財政による米・繭価の値下がりと秩父事件の関連を問う選択肢がよいのではなかろうか。

2020.2.23

 


2024年(R6)年度入試(2025年1月実施)から「歴史総合」「日本史探究」を組み合わせて1科目

新学習指導要領に基づく必履修科目「歴史総合」は、共通テストでは「歴史総合」「日本史探究」、「歴史総合」「世界史探究」、「地理総合」「地理探究」、「地理総合」「歴史総合」「公共」の4つの組み合わせで出題されることが想定されます。

2020.10.22