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新教育課程を反映した初めての出題である。
日本史選択者には第1問の世界史の問題が難。
日本史の問題は、史料が現代語訳されている出題が多く易化している。
「歴史総合・日本史探究」の平均点が59点に留まったのは、以下で述べるように、第1問の「歴史総合」(25点)の問題で世界史の出題割合が68%と高く(『歴史総合・世界史探究』では、「歴史総合」(25点)の問題で日本史の出題割合は32%と低い)、『歴史総合・日本史探究』の平均点は59点となっている(『歴史総合・世界史探究』の平均点は68点)。日本史と世界史の平均点に9点の開きがでては大学の合否に明らかな影響がでるため、大学入試センターの地歴・公民の問題作成は失敗である。
地総・地理探究 59.68点 標準偏差 15.58
歴総・日本史探究 59.11点 標準偏差 15.87
歴総・世界史探究 68.35点 標準偏差 17.43
(大学入試センター中間集計2025.1.22)
地総・地理探究 .点 標準偏差 .
歴総・日本史探究 .点 標準偏差 .
歴総・世界史探究 .点 標準偏差 .
(大学入試センター2025.2.)
おそらく、大学入試センタが意図した平均点のターゲットは60点と考える。60点とした場合、日本史探究の問題は良問である上、ほぼターゲットの平均点の問題作成をしているので評価できる。ところが世界史探究とは9.24点の差があり、難易度が異なっていて(この原因として以下で述べるように日本史選択者の世界史の出題割合が高く、世界史選択者の日本史の出題割合が低いことがあるのではないか)、地歴全体の問題作成としては、不公平で失敗している。
共通テストの得点のみで合否決定をする大学・学部、あるいは共通テストの配点の高い大学・学部においては、日本史と世界史の平均点の差は合否を決定する難易度の差がある。
日本史探究・地理探究の選択者は、良問を問いて努力を実らせたものの、大学入試は、同じ学力の世界史探究選択者が合格し、日本史探究・地理探究を選択した受験生は不合格になる。
科目間で20点以上の平均点の差があれば大学入試センターは得点調整をする。このことは平均点の差があれば受験生の間に不公平が生じることを大学入試センターが認識していることを示している。すなわち平均点の差は大学入試センターの作問の責任であり、受験生に不利益を与えることを公的に認めていることを示している。
それではなぜ20点で得点調整なのか。10点であり、5点ではないのか説明が必要である。公平な入試のためには平均点が同じでなければならない。平均点を同じにすることは可能である。1つの方法は、科目間の平均点が同じになるように作問する事である。実際、科目間で2点以内の作問が可能なことは過去の地歴科平均点の事実が示している。もう一つの方法は、偏差値を得点とすることである。さらに、もう一つの方法は地歴・公民科と理科では平均点が同じ点になるように得点調整をすることである。
大学入試センターは自らの作問の失敗の責任を、受験生の「運」として押し付け、その後の人生に影響を与えてはならない。
大学入試センターは社会的責任があり、反省だけではなく責任もとらなければならない。入試を公正に行うために、平均点の調整システムの構築を強く求める。
2025.1.26
第1問は、初めての「歴史総合」の問題である。
「歴史総合」は近現代の日本史と世界史の総合科目である。
「歴史総合」の第1問は「歴史上における境界」というテーマ史になっている。
「歴史総合」「日本史探究」第1問(25点)の日本史と世界史の配点。
「歴史総合・日本史探究」の第1問「歴史総合」のうち、日本史8点(32%)、世界史17点(68%)であり、日本史選択者の世界史分野の問題の割合は100点のうち17%である。
対して、「歴史総合・世界史探究」第1問「歴史総合」のうち、日本史と世界史の配点割合は、日本史8点(32%)、世界史17点(68%)であり、世界史選択者の日本史分野の問題の割合は100点の内8%である。
このことが平均点の差になった可能性がある。
配点の多い第1問の「歴史総合」の出題が世界史選択者に明らかに有利になっている。なぜこのような作問になったのか大学入試センターの責任を問う。
第2問は、テーマに沿った形で、原始・古代、中世、近世、近現代の全分野から出題される。
《今回のテーマ》
◇令和7年度第5回共通テスト本試験(2025.1.18)の第1問の通史のテーマ「砂糖・菓子の歴史」砂糖・菓子の国産及び交易に関する出題。
《直近の日本史Bセンター試験・共通テスト本試験(及び第1日程)の第1問・通史のテーマ》
◇令和6年度第4回共通テスト本試験(2024.1.13)の第1問の通史のテーマ「印刷の歴史」
◇令和5年度第3回共通テスト本試験(2023.1.14)「地図から考える日本の歴史」日本の行政区画と辺境、東アジア情勢、作図の意図などを問う出題。
◇令和4年度第2回共通テスト本試験(2022.1.15)「姓・苗字(名字)・名前」
◇令和3年度第1回共通テスト第1日程(2021.1.16)「貨幣の歴史」
◇令和2年度センター試験(2020.1.18)「教育」
◇平成31年度センター試験(2019.1.19)「交流・外交」をテーマに、第1問で、近世までの地域、東アジア、蝦夷地との交流・外交に関する出題、第6問で日米外交史に関する出題という変則的な構成となっている。
◇平成30年度センター試験(2018.1.14)「観光」
《共通テスト試行調査第1問・通史のテーマ》
◇第2回試行調査(2018.11) 「土地開発と災害の歴史」
◇第1回試行調査(2017.11) 18歳選挙権制の実現をふまえ「中世までの「会議」や「意思決定」の方法」
2025. 1.26更新
①時代別配点
第1問 歴史総合「歴史上における境界」(25点)近代18.25 現代(日本史の戦後)6.75点
第2問 テーマ史「砂糖・菓子の歴史」(15点)古代4.25点。中世2.5点。近世4.5点。近代3.75点。
第3問 古代(15点)
第4問 中世(15点)
第5問 近世(15点)
第6問 近・現代(15点) 近代8点。現代7点。
全体 古代19.25点。中世17.5点。近世19.5点。近現代43.75点(うち近代30点。現代13.75点。現代は1999年まで出題)
【参考】《令和6年度》の時代別配点{( )は令和5年度}
原始・古代 19.00点。(21.25点)
中世 21.00点。(21.25点)
近世 23.75点。(19.75点)
近現代史【ペリー来航以後の幕末を含む】 36.25点。(37.75点)。うち現代史【戦後】の問題 9.00点。年まで出題。 (6点。1976年まで出題)
②分野別配点
政治【軍事。経済・金融政策を含む】 古代3点 中世6点 近世12点 近代4.5点 現代6.75点 合計点32.25点
外交 古代6.75点 中世0点 近世0点 近代11.25点 現代0.75点 合計18.75点
経済・交易 古代3.75点 中世3.75 近世0.75点 近代1.5点。現代0点 合計9.75点
社会 古代0.75点 中世1.5点 近世6.75点 近代10.25点 現代5.75点 合計25点
文化 古代5.25点 中世6点 近世0点 近代2点 現代1点 合計14.25点
《令和6年度》( )は令和5年度
政治【経済・金融政策を含む】 28.33点。(24.5点)
外交 30.8点。(24.25点)
経済 10点 (12.25点)
社会 11.33 27点 (27点)
文化 19.5 12点。(12点)
③出題方法・形式
《出題方法》
【地図】2問(中国1。西日本地図1・・地理的な有利不利はない)
【資料(史料)】14 史料を現代文に直して出題する場合が多くなっている。
【資料】画像4。グラフ2。まんが1。
《出題形式》
[完成法]4問。語句・文の組み合わせ2。適当なもの2。
[正誤法]14問(適当なもの7。適当でないもの・可能性がないもの7を選択)・・誤っているものを選ぶ方が答えやすい。正しいものの選択は平均点調整のためであろうか。「可能性がないもの」は初出。
[組合せ・正誤法]12問(適当なもの5。正しいもの7)・・共通テストで中心になっている出題形式。難易度は高くなる。
[年代序列]3問。6択。3つの歴史的事象の年代序列は共通テストの定番となった。歴史的思考力により回答させる作問が求められ、年代暗記の学習方法で回答できる作問は避けるべきである。
2025.1.28更新
〇第1問 問8 問題番号8
解答番号8
テーマの設定と探究方法。
「境界」の主題(テーマ)の設定→探究→新たな主題(テーマ)の設定「人やモノの移動が境界を越えて促進された場合の影響」
《主題を探究するための問い》
あ・・ベルリンの壁の崩壊の影響
い・・明治政府の海外からの知識・技術の生活への影響
《考察するための学習活動》
あ・・WかXのうち正しいものを選択。誤・Wドイツ関税同盟1834年。正・ベルリンの壁崩壊1989年。
い・・YかZのただしいものを選択。誤・Y。正・Z
正解④ 易。
〇第6問 問5 問題番号33
解答番号33
疑問点によるテーマの設定と問題解決の方法。
資料・4コマ漫画・長谷川町子「意地悪ばあさん」
《疑問》
あ・・女性の政治参加の進展状況
い・・松本清張を登場させた理由
《調べ方》
あ・・WかXか。正・W・1890年第1回総選挙→1946年女性がはじめて衆議院総選挙で投票→まんが1971年。
い・・正・Z・松本清張の社会的評価を調べる
正解② 標準
《出題の傾向》
〇史料問題は定番。
〇史料問題は、初見史料の読解と歴史の基本的な理解を複合させて思考させる出題である。
第2問 問1 問題番号9
解答番号9
史料読解と基本知識による解答。
出典 工藤平助『報国以言』→老中田沼意次に提出
あ・いは田沼意次の政治政策の基本知識により解答
あ・正。
い・田沼は株仲間を広く公認した・誤
う・えは史料読解により解答
う・中白砂糖の消費量150万斤のうち菓子や製造用は4~5百斤で些少・誤。
え・下賤のものが異国の物を日用の慰みの食物とすることは甚だあってはならないこととしている・正
正解② 易
第3問 問3 問題番号16
解答番号16
史料読解と知識による解答。
資料1 宋の時代(960~1127年)の史料。渤海は698~926年。資料の「高麗国」は朝鮮半島の「高麗」(918~1392年)と推察される。
資料3 隋の煬帝の高句麗遠征の失敗。「高句麗」(前1C~668年)に関する史料
資料4 百済国(4C~660年)、雄略天皇(5C末ころ)とあり、「高麗」は高句麗。
正解・② やや難
第4問 問1 問題番号19 問2 問題番号20
解答番号19
史料読解と基本知識による解答
①「唐本」・・中国製・正
②有力御家人・・評定衆・引付衆・正
③半済令・・室町幕府の政策・誤
⓸御家人笠間時朝の和歌・・勅撰和歌集に掲載・正
正解③ 易
解答番号20
史料読解と基本知識による解答
《図の説明》
あ 文永の役の時は石塁の構築なし・誤
い 石塁構築後の弘安の役・正
《資料2『島津家文書』からの考察》
X 「領家」(荘園領主)と「地頭」の下地中分において、史料より「警固役」は両者の負担、石塁(「石築地」)構築は両者等分の費用負担となっている・誤
Y 正
正解④ 標準
第5問 問2 問題番号24
解答番号25
史料読解と基本知識による解答。
出典『長岡京市史 資料編三』
①作物窃盗・ばくち場所提供・・五人組1000文。果実・きのこの窃盗・・本人300文・五人組400文。罪によって違いがあるので誤り。
②「処罰村として行う」ので誤り。
③五人組の連帯責任。正
⓸農民の生活統制法令(「慶安の触書」)は発布されているので誤り。
正解③ 標準
第5問 問4 問題番号27
解答番号27
史料読解と知識
あ 浅間山噴火(上野の国・群馬県)・天明3(1783)年・・正
い 「荒地は年貢賦課の対象外」とあるので誤り。
う 噴火前の村人592人→幕末期199人。回復していないので誤り。
え 同上・・正
正解② 標準
第6問 問1 問題番号29
解答番号29
史料読解と基礎知識による解答。
《資料1から読み取れる内容》
あ「西郷の札までも今や価値が落ちてしまい、もはやこの世には5円すらない」と経済的に厳しい状況を描いている・・正。
い 朝日新聞1895年・・1910年朝鮮総督府、1895年台湾総督府・・朝鮮総督府は1895年には存在しないので誤り。
《西南戦争開戦1877年と同時期の政府の政策》
X 地租改正一揆1876年、地租を地価の3%から2.5%へ引き下げ1877年・・正
Y 日本銀行の銀兌換銀行券発行と銀本位制1885年・・誤
正解① やや難
問6 問2 問題番号30
解答番号30
史料読解と植民地支配の基礎知識による解答。
①「そのころの私は何も考えることがなかった。飯上げ(食事配給)、使役(作業労働)、洗濯、掃除以外には仕事がなかった」とあり、正しい。
②「英語の古教科書を買い、軍服の下に忍ばせて内務班に持ち帰った。それを医務室の庭の、誰もいないところでこっそりひろげた」とあり、正しい。
③正しい
⓸土地調査事業は1910年の韓国併合後進められ1918年に終了したので誤り。
正解④ 標準
2025.1.31 更新