教員は、授業では何を(授業内容)どのように(授業方法)教えるかを考える。これは学習指導案に示される。
授業内容は、学習指導要領と教科書があるので大枠は決まっている(学習指導要領には法規性がある・伝習館訴訟)。授業時間には限りがあるので内容の精選が求められる。また、地歴では、教科書に記載されていないものの、生徒に身近な地域の歴史学習も必要となる。
授業方法には講義形式やアクティブラーニングなどの方法がある。次期学習指導要領では「主体的で対話的で深い学び(アクティブラーニング)」を求めている。思考力や興味・関心を高めるためには授業に工夫が必要です。
平成30年(2018)3月30日に発表された高等学校学習指導要領のキーワードは問題解決型学習の「思考力」「判断力」「表現力」です。
日本史学習のひとつの理想形は、全員が無試験で私立大学に進学する当該私立大学系列の付属高校でみられる授業です。生徒が興味関心のあるテーマを決めて研究し発表する大学のゼミのような学習をしている付属高校がある。しかし、こうした環境にある生徒は極めて少数です。このようなテーマ学習を、夏休みの自由研究か授業の課題研究で実施している場合はあるでしょう。大学入試改革も漸進的に進んでいますが、受験で日本史を受験する選択者の多い普通高校では、当面は、ほとんどの生徒にとって、センター試験や個別学力試験への対応が求められるのが現実です。
大学進学率が高くなり、将来の職業とも密接に関連する大学入試は教員にとって避けては通れません。
センター試験は高校の授業(教科書)の範囲の内容で出題されます。平均点は60点(~65点)をターゲットにして出題がされているようです。
日本史A・Bのセンター試験の問題は、歴史的事象の基本的な理解をふまえたうえで、歴史的事象相互の関連性、歴史の流れ、史料・資料読解力などの総合的な歴史的思考力を問う出題がされます。センター試験は高校教員からの意見・評価がおこなわれ、出題に反映されています。
センター試験は2020年度(2021年1月実施)から「大学入学共通テスト」となり、国数英で記述式問題が導入される予定でした(追記:2020年度からの記述式の実施は見送られました)。高校の授業や定期考査の出題にも変化が出ると考えます(次期指導要領に基づく地歴科の「大学入学共通テスト」は2024年度(2015年1月実施)からです)。
地歴では、一部の国公立大学の二次試験(個別学力検査)や私立大学等では大学が求める独自の学力観にもとづく多様な問題が作成されています。
入試問題には模範解答があるが、AО入試や推薦入試では解答だけではなく、面接、討論、論文などにより、大学が求める受験生の資質が問われます。例えば、「死刑は是か非か」という問いは価値判断(~べきである)なので、数学のような科学的・客観的な解答(~である)はなく、資料に基づいて論理的に考え、主体的に是非を判断して、表現・伝達をしなければなりません。
少子化と大学進学率の定着により大学入試は全体的には緩和されていきますが、志望者の多い大学や学部の難易度に変化はないとみられます。
2020.8.22更新 2022.4.6追記
《参考》
①平成31~29年度センター試験(本試験) 各科目平均点・標準偏差[100点換算]。
平均点 標準偏差 満点
H31~29年度 H31~29年度
国語 55.64・52.34・53.48 16.55・17.47・17.72 200
日本史B 64.11・62.19・59.29 18.88・18.82・20.14 100
数学Ⅰ・数学A 65.95・61.91・61.12 20.52・18.69・21.35 100
数学Ⅱ・数学ⅡB 52.46・51.07・52.07 24.08・22.63・24.29 100
物理 Ⅰ 64.08・62.42・62.88 18.59・23.68・22.45 100
英語 61.39・61.87・61.86 20.62・20.60・22.47 200
②令和6年度共通テスト本試験 各科目平均点・標準偏差[100点換算]。
平均点 標準偏差 満点
国語 58.25 17.66 200
日本史B 56.27 16.88 100
数学Ⅰ・数学A 51.38 20.73 100
数学Ⅱ・数学ⅡB 57.74 20.67 100
物理 62.97 22.82 100
英語(リーディング) 51.54 19.94 100
英語(リスニング) 67.24 17.12 100
国語は標準偏差が小さく、他の科目に比べて受験生の得点差がつきにくい性格がある。他教科との比較で分布曲線は中央部が高い山になり、国語の偏差値が高く他の受験生より相対的に学力があっても100点に近い高得点はとりにくい。数学Ⅱ・物理は標準偏差が大きく得点にばらつきがあり、分布曲線は国語よりなだらかな山になる。数学・物理が得意だと100点に近い点を取ることができる。
また、国語と英語が同じ偏差値(同じ学力)とした場合、国語より英語のほうが標準偏差が大きく得点差がつく性格がある。受験の合否は偏差値合計ではなく得点合計で決まるので、同じ学力(偏差値の合計が同じ場合)なら、国語が得意より、英語が得意なほうが多く得点でき有利になる(逆に英語が不得意(偏差値が低い)だと受験は苦しくなる。しかも英語は文理を問わず受験科目に必ずあり配点が高い。入試は英語がポイントになる)。ただし高得点層では英数の得点で差がつかないため、難易度の高い入試では国語の得点が合否を左右する。
日本史は国語と英語・数理の中間的性格があり、学力と得点のバランスがとれた科目といえるだろう。
【偏差値=10(得点-平均点)÷ 標準偏差+50】。得点と平均点が同じなら偏差値は50になる。
国立大学の一般入学試験の多くはセンター試験と2次試験の合計点で合否が決まる。センター試験と2次試験は傾斜配点が行われており、たとえば、センター900点を450点に換算し、2次試験450点とすれば、センター試験の得点は小数点がでる。管理者も、かつて、勤務校からの請求により九州大学から送られて来た大学入試の選抜資料において、合格最低点に1点未満の点が足りずに不合格になった生徒がいた経験がある。このようにボーダーライン周辺は1点の差で合否が決定する実態がある。
1点未満の差で合否が決まること自体は機会均等を損なっているわけではなく公正である。
不公平は、センター試験(2次試験も)が、合計得点で合否が判定されるにもかかわらず、科目間の平均点に差が出ていることである。管理者は、共通一次初年度からセンター試験の時代を通して日本史の受験指導をしてきたが、地理や世界史の平均点より低い年が多く、時には十数点差がついて、日本史で努力した生徒が、平均点の差という不合理な理由によって報われないことがたびたびあった。(勿論、その逆の年もある。)
管理者の作成していた日本史の定期考査・模擬試験では、1点の差は学力差を反映しており、学力下位の生徒がこの1点を覆すのは難しかった。これが、学校単位の平均点で1点差があれば、何回試験をしても逆転は不可能な学校間の学力差がある。
教員は、定期考査において、ターゲットの平均点を設定して、その前後1~2点以内に平均点を収めることは難しいことではないと考える。
かつて、困ったことに、校内作成の定期考査・模擬試験において、地歴科内で担当している科目で内規の平均点よりいつも高く出す教員がいた。得点は評定となり(たとえば、平均点を60点にする目標が設定され、65点以上を評定4とする教務内規とする。日本史は内規の通り平均点60点の問題を作成した場合、日本史で平均点の60点をとった生徒の評定は3となる。一方、世界史は内規に従えず、平均点が70点の問題を作成した場合、世界史で70点とった生徒の評定は4になる)、推薦入試等の資料として使われるので、生徒に不利益を及ぼし、他の教員は困っていた。これと同じことが、毎年センター試験で制度として起こっており、大学入試センターはこの不公平を放置し、受験生に不合理な不利益を与え続けている。
センター試験の日本史・世界史・地理は分母が大きく、60点から65点の範囲に平均点を収めることは難しいことではないと考える。大学入試センターは、学力に見合う公平な入試制度を追求する責務を負う以上、この範囲を超えれば得点調整をしなければならない。
たとえば、女子生徒に多い日本史・生物の選択をしたため、化学・世界史などの他の組合せを選択した生徒と平均点合計で20点差がつけば、2次試験での挽回は厳しくなり、志望校の変更を考えなければならなくなる。浪人や他県の大学への進学は経済的負担が大きく、人生設計にも影響する。同じ学力の生徒が、平均点の差という不合理で不公平な仕打ちを受けることになる入試を、大学入試センターが共通一次試験以来、40年以上続けて来たことは指弾されるべきである。
現在、得点調整は、地歴科(日本史B、世界史B、地理B)、公民科(「現代社会」、「倫理」、「政治・経済」、理科②(「物理」、「化学」、「生物」、「地学」)の問題の難易差に基づき、受験者数1万人以上の科目で平均点20点以上で実施することになっている。平均点はターゲットが設定されているはずで、平均点が20点以上の差がつくことはほぼありえないことなので、この制度は何もしませんといっているに等しい。地歴・公民と理科を加えれば平均点で最大40点の差が生じるまで得点調整をしないといっているのだ。しかも、受験生が1万人に達しなければ平均点の差は考慮されない(2020年1月実施の「地学」選択で不利益が生じている)。
この得点調整制度が公平さを欠いていることは前記の通りであり、この状態を40年以上続けている大学入試センターが受験生や家族にどれだけの損害を与えてきたのかはかりしれない。国民への損害ともいえる現在の得点調整制度を改革するべきであり、このまま、ほうかむりをして責任を取らないことは許されないことである。
さらに、この得点調整は教科内の科目間での実施に留まっていて、教科間の得点差では行われていない。また、1万人以上という条件がついている。センター入試では、たとえば、「数学Ⅰ」と「簿記」との選択や、外国語で受験生の少ない言語の選択などにおいて平均点に差があり、こうした多くの不公平が放置されている。
平均点の調整は、すぐ取り掛かるべきであり、今回、「共通テスト」の導入にともない大学入試の検討がされており、改革の好機である。
共通テストは、思考力等を問う問題作成に関心が集まっている。しかし、いくら良質の問題が作成されても、現在の得点調整制度において、科目間の平均点の差が5点以上になれば、良質の問題を解答したものの、大学入試は不合格になったという欠陥が出てしまい、思考力を問う良質の入試問題作成の努力は水泡に帰する。
すなわち、思考力のいらない、単純な問題が出題されて得点しやすい科目を生徒は選択する。
すぐにできる改革は、①教科内の各選択科目は、偏差値で学力を判定することである。各科目の受験者の学力に差があって平均点に差が出ていると考えることができるかもしれない。この学力差は、共通問題の国語・英語・数学の学力(得点)と比較すれば、受験生の学力差が科目間の平均点の差につながっているかは判断できるので調整すればよい。②得点で学力を判断することを継続するのであれば、前記のように、センター試験の場合、60~65点の枠を絶対的な条件とすべきである。この枠をはみ出る科目が出た場合は、平均点を同じにする得点調整をしなければ不公平である。コンピューターは進化しており平均点をそろえる操作は難しいことではない。また、60~65点の枠に入る問題作成は難しいことではない。1点の差が合否を決定する以上、平均点は本来は同点でなければならず、同点になる得点調整をしなけばならない。③受験生・保護者(PTA)は、声を大にして、平均点に差があることが不公平な大学入試制度であることを指摘するとともに、大学協会、全国校長会や学会、教員の研究会等関係団体が是正を強く要望し、文科省・入試センターを動かす政治的な力で改革しなければならない。
昨年11月の共通テストの試行では、思考力を問う問題のため日本史の平均点がかなり低くなっている。良質の問題のために日本史の平均点が低くなったことは問題ではない。しかし、昨年11月の共通テスト試行の地歴科の平均点は、世界史B59.24点、日本史B53.58点、地理B60.02点となっており、例年よくみられる、良質の問題である日本史B選択者が、平均点の差で不利益を被る状況が継続している。これでは、受験生は、良質の問題の日本史選択から、単純に解答できる科目に授業選択を替えてしまう。そして大学入試問題の改善から、高校の授業の改善に繋げようとする、新学習指導要領、入試改革、高大連携の試みは失敗に帰結する。
もう一度いうが、いくら日本史で思考力を問う良質の問題が作成されても、日本史の平均点が世界史や地理より低くなれば、大学入試では不合格となる。この不合理に対し、大学入試センターは答えなければならない。そして、これまでも日本史の問題は良質だが平均点が低いことが繰り返されてきたことを指摘しておく。こうした不公平が、これまで国民から大きな非難をされず容認されてきたからといって、大学入試センターが放置を続けることは許されない。
受験生の機会均等を守り、公平な大学入試を実施するため、平均点の差による受験生の不利益を是正するよう国民全体が声を上げ、大学入試センターや各大学が得点調整制度を是正する時が来ている。
2020.8.22更新
以下の表は、大学入試センターが令和6年(2024)2月5日に公表した共通テストの平均点と標準偏差である。
英語(リーディング)と政治・経済が過去最低で、中国語は過去最高であった。
英語と中国語の科目間格差は20点以上あるが平均点の調整はされない。
各教科の科目間格差は次のとおりである。平均点に大きな差が出ており、授業や共通テストの科目選択により大学の合否や志望大学・学部が決まってしまう。共通一次・センター試験・共通テストと続く、平均点格差に受験生は泣き寝入りでよいのだろうか。
科目間平均点の格差(科目内で平均が最も高い科目と低い科目の比較。100点換算)
地理歴史科 日本史B56.27点 地理B65.74点 格差9.47点
公民科 現代社会55.94点 政治・経済44.35点 格差11.59点
理科 物理62.97点 化学54.77点 格差8.2点
外国語 英語(リーディング51.54点 リスニング67.24)59.39点 中国語86.04点
格差26.65点
2024.2.6
大学入試センターは、『令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針』R2(2020).1.29の中で問題作成にあたり、以下のように「平均得点率に著しい差が生じないように配慮する」としている。しかし、現実の大学入試の合否は1点で決まっており、「著しい差」というあいまいな方針では「配慮」していないことと同じと考える。
「○ 問題の分量・程度
問題の分量は,試験時間に応じた適切なものとなるように配慮する。
出題教科・科⽬に選択科⽬,選択問題がある場合は,選択科⽬間及び科⽬
内選択問題間の平均得点率に著しい差が⽣じないように配慮する。」
受験生の機会均等を図るためにも、平均点に1点の差もでない得点調整方法を確立すべきである。
2020.6.12最終更新
驚きを通り越してあきれた。
令和3年度の共通テストは追試、追試の追試が実施されるためなのか、「本試験と追試験の得点調整はしない」と報道された。(朝日新聞2020.6.18朝刊1面)
例えば地歴において、本試験日本史B62点、追試65点、(追試の追試55点、)世界史B本試験60点、追試68点、(追試の追試50点、)地理B本試験65点、追試70点、(追試の追試45点)となった場合を仮定して、得点調整は行われない。選択した科目や本試験か追試験という「運」で合否や進学先が決定する。これは、地歴だけでなく理科でも起こり、科目だけでなく、数学Ⅰと簿記などの教科の選択でも起こる。前記の例だと世界史B本試験60点と地理B追試で10点の差がある。これが理科でも起こると選択科目の平均点の差により得点に20点の差がでる。
同じ学力を有した受験生にどれだけの得点差が生じると大学入試センターは試算しているのか公表すべきだ。
これは公正な入試ではない。
共通一次以来、公正な入試のための得点調整を研究する時間は十二分にあった。大学入試センターはこれを怠り、放置してきたために、COVID-19に直面して対応できず、公平な入試の実施という職責を放棄してしまった。管理者は昭和54年(1979)の共通一次発足以来、その後のセンター試験を通して日本史の指導をしてきたので、学力のある生徒が他科目(世界史、地理、倫理)との平均点の差で泣いてきた(日本史受験生が望外の僥倖を得る年もある)のを見てきたから発言している。この受験生の苦しみを知りながら今後も続け、令和の共通テストまで改善しなくて関係者は社会的責任を果たしていると言えるのだろうか。
まだ間に合う。得点調整の方法をただちに研究し導入しなければ悲惨な結果が到来する。一例として、偏差値を得点化すればすぐに実施できる。各科目の平均点を同一にして得点の再処理をすることも可能だ。短期間でも得点調整の方法は開発できるはずだ。
共通一次試験が始まって40余年、受験の機会均等のために、真剣に得点調整に取り組まず放置してきたツケが回ってきて、大学選抜の公平性は完璧に失われてしまった。これはコロナウイルスの責任ではなく人災である。
2019.6.18更新
大学入試センターは、「⑵ 令和 3 年 1 月 16 日(土)及び 17 日(日)に実施する試験と令和 3 年 1 月 30 日(土)及び 31日(日)に実施する試験の間では,得点の 調整は行わない」とした。
「福岡県の私立高3年の男子生徒(17)は「日程によって試験問題が変わるのに、学力を公平に測ることはできるのか」と不満をにじませた。出題傾向は同じとはいえ、問題が違えば難易度に差が出るのではと不安視する。「受験は1点で合否が決まってしまう世界。どちらの日程を選ぶか、決められない」」(朝日新聞2020.7.1。14版26面)。
このような不満が生じ不安を引き起こしているのは自然なことである。平均点の差の得点調整を実質的に行わない不公平は、社会(地歴・公民)、理科において、1979年1月の共通一次試験以来、2020年1月のセンター試験まで、42年間放置されてきた。平均点の不公平は受験生の合否を決定し、進学先の変更を余儀なくしてきた。入試センターが得点調整の研究をせず放置してきたことが、コロナ禍の2021年1月の共通テストで社会問題化してきた。平均点の不公平が地歴・公民、理科を超えて、複数回実施の国数英にまで拡大することになるが、この現実に直面してなお入試センターは対応を放棄し得るのだろうか。今からでも遅くない。AIなどの技術を使えば得点調整は可能であり、入試センターの職責ではなかろうか。
これまで放置してきた入試センターの責任は明確であり、集団訴訟の可能性すらでてくる。本来国公立大学に合格できる学力がありながら、日程や教科・科目の平均点の差で不合格となり私立大学に入学することになれば、4年~6年間の学費は、学部で差があるだろうが、理系では1人数百万円から3000万円程度(医歯系)になる。大規模、高額の賠償を求める集団訴訟が起こされる可能性がある。
2020.7.2最終更新
「九州大学は19日、2月26日に実施した一般入試(前期日程)で出題ミスがあり、11人を追加合格にすると発表した。(中略)ミスがあった問題(配点は3点)について受験生全員を正解扱いとして加点した結果、11人が追加合格となった。」(朝日新聞2020年3月20日付)
九州大学前期日程の個別学力試験(2次試験)で、出題ミスのあった化学基礎・化学の試験が実施されれたのは理系学部(理・医・歯・薬・工・芸工・農)である。各学部で多少の差はあるものの、センター試験と2次試験の配点はセンター試験450点(配点比率39%)、2次試験700点(配点比率61%)となっている。
今回、2次試験が3点アップされたことで11人の追加合格者がでている。2次試験の3点はセンター試験の4.7点に当たるので、センター試験の地歴・公民科、理科の選択科目の平均点に4.7点の差があれば、九州大学理系学部だけで11人の合否に影響が出ることになる。
九州大学後期日程は、2次試験の配点比率が半減してセンター試験の割合が倍増する。他の国公立大学の前期・中期・後期日程では一般的にセンター試験の配点比率が高い。センター試験の地歴・公民科、理科の平均点の差が合否に影響する度合いは九州大学前期日程の比ではない。
今年度センター試験の理科は、物理60.68点と地学39.51点で21.17点の差があるが地学の受験者が少ないため得点調整はない。これはもはや「国家の犯罪」である。
大学入試の機会均等、公正を期すためには、来年度の共通テストに於いて、地歴・公民科、理科の平均点を同点に調整する(あるいは偏差値での得点とする)入試改革が求められる。
2020.3.20更新
世界史B 65.36
日本史B 63.54
地理B 62.03
(平均点は大学入試センター2019.2.7による)
世界史の平均点がやや高いが、ほぼ60~65点の範囲に収まっており、世界史Bと地理Bの平均点の差は3.33点なので、今年度の平均点は評価できる。
大学入試センターは、来年1月の共通テスト志願者は、今年1月のセンター試験よりも約2万人少ない53万5244人と発表した。
1月16、17日の第1日程志願者が53万1118人、30、31日の第2日程は789人にとどまった。
文科省が7月に意向調査を行った際は約3万人が第2日程を希望していたが、志願者は大幅に減った。
管理者は、「平均点の不公平が地歴・公民、理科を超えて、国数英にまで拡大することになる」と指摘していたが、第2日程の志願者が少数となり、国数英の平均点の不公平は緩和された。
しかし、地歴・公民、理科、その他の教科間(「数学Ⅰ」と「簿記」の選択など)の平均点の不公平を放置することは許されないと考える。
2020.10.15
世界史B 62.97点
日本史B 65.45点
地理B 66.35点
(大学入試センター2020.1.6 最終発表)
世界史Bの平均点が低いが、平均点の目標設定が60~65点の範囲に設定されているとすれば、世界史Bと地理Bの差は3.38点であり、ぎりぎり許容範囲内と考える。
世界史B 63.49点
日本史B 64.26点
地理B 60.06点
(大学入試センターHP)
地理Bの平均点が低い。平均点の目標設定が60~65点の範囲に設定されているとすれば、ぎりぎり範囲内である。共通テストの目標平均点を公表していただきたい。
世界史B 65.83点
日本史B 52.81点
地理B 58.99点
(大学入試センターHP)
今年度の地歴科の平均点は、危惧していたように許容範囲を超える差が出る状況である。2022.1.19
世界史B 58.43点
日本史B 59.75点
地理B 60.46点
(大学入試センター)
昨年度の是正がなされ、今年度の平均点は概ね2点以内であり、評価できる。このことは、目標平均点を設定して作問を検証すれば60点平均の作問が可能であることを示している。
世界史B 60.28点
日本史B 56.27点
地理B 65.74点
(大学入試センター2024.2.5)
おそらく、平均点のターゲットは60点と考える。日本史Bは良問を作成したが、世界史Bとは5点の差があり、難易度が相違している。地理Bの68.38点は、問題作成者の能力の欠如というしかない。日本史Bと10点近く差がでては、センターの得点のみによる合否決定、あるいはセンターの配点の高い選考においては致命的な差である。反省だけではだめで、入試を公正に行うために、平均点の調整システムの構築を強く求める。
2024.2.6
現在、小・中・高の教育内容・方法の改善、大学入学共通テストの導入が実施されている。
文科省の教育改革はアメリカの教育を模範として実施されてきた。1991年の大学設置基準の大綱化以降、ファカルティ・ディベロプメント、シラバス、授業評価などが実施されてきた。
アメリカの大学入試では、SAT(日本のセンター試験)、高校の成績、課外活動(ボランティアなど)、リーダーシップ(特別活動や部活動のリーダー)による選抜が行われている。このような入試制度がどの程度導入されるかは未知数だが、これまでの日本で行われてきた国社数理英の学力試験による1点を争う大学入試とは違った形の入試である。
また、卒業認定が厳しいアメリカに比べ、入学すれば卒業は簡単とされる日本の大学教育も課題となろう。入学したら、大学が責任を持って卒業させる意欲が過剰にあり、学生が努力を怠るという日本の大学の悪しき伝統を改めなければならない。入学はできるが努力して学力をつけない限り、単位認定も卒業も認めない大学に脱皮しなければ、実力のない卒業生となり、グローバル化のなかで海外の大学に太刀打ちできなくなる。
《解答が1つだけでない出題》
共通テストでは解答が1つだけでない出題を提案し、その例を紹介する。
テストに慣れた高校生は思考の過程より答えを求める傾向がある。大学入試は、博学と頭の回転により、定められた答えを解答していく公務員試験やクイズではなく、思考過程を重視していくべきだ。
次は九州大学大学院人文学府日本史学修士課程の院試(平成27年度第1期)の問題の一部である(九州大学大学院HPより。著作権は九州大学大学院人文科学院に属す)。 この問題はレベルが高いので大学入試に直結はしないが、出題方法に関して、解答が1つではない設問が含まれている点が今後の出題の参考になると考える。
共通テストが変われば高校の授業や考査も変えざるを得なくなるのではなかろうか。
2020.8.1最終更新
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〇相対評価がもたらす学習への疎外感
「高校生」の本質は「学び」と考えますが、なぜ高校生の多くが学習に喜びや楽しさを感じず、学習することに苦痛や疑問を感じるのでしょうか。管理者は、高校の学習が相対評価や相対評価を基準とする5段階評価をしており、このことが学習への疎外感に繋がっていると考えます。
相対評価と絶対評価に関して以下で説明します。
高校の評価は相対評価を基準としており、大学入試も同様である。高校で一般的な5段階評定の場合は、例えば、80点以上を「5」、60点以上を「4」、40点以上を「3」、20点以上を「2」、20点未満を「1」として、「1」は単位未修得(一般に欠点という)とする。それでは、全員が80点以上を取れば全員5となる仕組みになっているのだろうか。
生徒同士が互いに助け合ってよく努力して学習し到達点に達すれば、全員が「5」となればハッピーで、全員が勉強に意欲的に取り組むことができる。これを絶対評価という。
例えば、大学では、90点以上を「秀」、80点以上を「優」、70点以上を「良」、60点以上を「可」として単位修得とし、60点未満を「不可」として単位未修得としている。平均点のしばりがなく、学生が授業に出席し、レポート等で努力すれば、全員が「秀」、「優」の評価を得ることができる(逆に学生の努力が不足した場合、全員「不可」もあり得る)。これが絶対評価である。
残念なことに、高校では全員を「5」とすることも可能な絶対評価は一般的でない。各高校に教務規定があって、平均点の範囲を決めたり、5段階のパーセンテージを定めている。「1」(欠点)はゼロパーセントでもよいが、特に、「5」と「4」は得点やパーセントに制限が設けてあり、「3」のパーセンテージが高くなるように設定されている。大学のように全員が「5」、「4」になることはできない規定になっている。これが相対評価である。
相対評価の5段階評定は、学習内容(授業・教科書・学習指導要領)の到達度を示しているわけではない。他の生徒と比較して相対的に上の位置にあるか下の位置にあるかを示している。だから、高校の学習内容に十分到達する学力を有していても、他の生徒が塾に行き、睡眠時間を少なくして頑張って点を取れば、相対的に低い位置になり、「3」の評価になってしまう。
ここに、高校生が学校や学習から疎外され、やる気を失い努力をしなくなり、授業に興味がわかない理由がある。日本の高校は、競争原理による相対評価が基本にある。本来、学習は競争ではなく協働であるべきだが、相対評価の中では自分のための学習に陥ってしまう。
この疎外感を緩和するのは、各学校の学校行事(文化祭・体育大会・修学旅行など)、ホームルーム活動、生徒会活動(学校生活の改善、応援活動など)の特別活動や課外部活動、ボランティア活動などである。これらの校内外の活動を通して、生徒は級友や部活などを通して仲間づくりや思い出づくり、社会とのかかわりを体験して高校生活を充実させている。
部活動も、競技(得点で勝ち負けを決める)では、県優勝の1チーム(全国大会出場レベル)を頂点とし、ベスト4(ブロック大会(中国大会など)出場レベル)、ベスト8(県総体で学校得点を獲得できるレベル)、3回戦、2回戦、1回戦のレベルのチームというピラミッド型の相対評価がされているといえる。本来所属するスポーツが好きにもかかわらず、他校や部内で競技に勝つために競争させられ、部活動に疎外感を持ち、嫌気がさす生徒は多い。しかし、この疎外感の反面、高校生活の思い出や卒業後の仲間ができるのも部活動である。
部活動の指導者が「勝つことが目的でない」というのは、勝ち負けを争う競技(またはコンクール)の本質と矛盾しているが、スポーツや教育の本質的な目的としては正しいのではなかろうか。部活の監督をする教師の中には「学習は現実、部活は夢」という方がいるが、人生には現実も夢も大切である。競技と教育の間のこの矛盾を止揚することができればよいのだが。
センター試験は到達度を問う絶対評価の試験ではない。平均点・標準偏差に目標が設定されているとみられ、難関大学や医学部入学などを競い合う相対評価の競争試験になっている。
今後の入試改革は、センター試験・共通テストを絶対評価、到達度評価とし、その後、大学で個性的な個別試験を課し、また、大学入学は容易にするものの、入学後の学習や単位修得を厳しくする大学改革が求められるのではなかろうか。
(センター試験は2019年度(2020年1月実施)で終了しました。2020年度(2021年1月実施)からは共通テストになりました。)
〇絶対評価と相対評価のシミュレーション
1クラス40名とし、定期考査(中間・期末考査)の得点のみで評価するとする(評価は他に課題提出・小テスト等が加味されるがここでは省略する)。
《絶対評価》学習の到達度で評価する。極論すれば、全員「5」の評価ができる。
極論すれば、40名を全員100点、クラス総点4000点を上限とすることが可能である。すなわち、平均100点で評価は全員「5」とすることが可能である。
《相対評価》「5」・「4」の評価を一定数に制限する。
極論として全員東京大学に合格可能な生徒40名の平均点を、例えば60点となるように設定し、学習内容の到達度は考慮せず、問題の難易度を上げて差がつくように作問する。この場合、クラス総点の目標は2400点となり、全員が100点を取ることはできない。全員東京大学に合格する学力のあるクラスでも、「3」・「2」と評価される生徒が多くなる。
40名の平均を60点・標準偏差20に設定すると、クラス総点は2400点程度になり、生徒間で2400点の奪い合いとなる。どんなに努力しても、100点や80点以上を取ることのできる生徒が少数にならざるを得ない競争型のシステムが相対評価である。
前記(相対評価)の条件で、正規分布曲線では40%の生徒が、50~70点(偏差値45~55程度)のゾーンに入る。
〈得点70点・平均点60点・標準偏差20〉の偏差値は、10(得点70点-平均点60点)÷ 標準偏差20 + 50 = 偏差値55
〈得点50点・平均点60点・標準偏差20〉の偏差値は、10(得点50点-平均点60点)÷ 標準偏差20 + 50 = 偏差値45
この40%のゾーン(得点50点~70点)を「3」の評価とすると、71点以上の30パーセントが「4」と「5」のゾーンになり、39点以下の30パーセントが「2」と「1」のゾーンとなる。
【注】以上は仮想であって、実際の高校の現場では相対評価と絶対評価を合わせた評価がされている。
考査以外の提出課題等の平常点も加味して得点に加え、「1」(欠点)がでないように配慮している。
ただ、落第を出さず卒業させることを前提としている高校教育や学力がなくても卒業できる義務教育でよいのかという、大学と同じ課題はある。
調査書に「2」の評価があると就職試験・推薦入試では生徒に不利益が出るので、「2」の評価ができるだけ出ないように配慮し、「2」の基準を低く設定したり、考査以外の課題等を評価に加えたりしている。また、こうした生徒の多い高校では評定平均が低くならないように、「4」以上の評価がでやすい教務規定にしている場合がある。
ただし、高校間には学力差があり、高校間で評価基準が違うため、大学入試で高校の調査書の評定は使わないことが一般化している。「欠点」を考慮する必要ない全国模試やセンター試験は、完全な競争試験、相対評価で実施されている。
〇アクティブラーニング・共通テストは絶対評価を基準にすべき
「アクティブラーニング」(主体的・対話的で深い学び)は絶対評価を基準とすべきであろう。
評価基準は、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「資料活用の技能」、「知識・理解」である。
アクティブラーニングの授業方法では、グループ学習やクラス討議が効果的と考える。グループで調べ、討議し、プレゼンをしながら相互に理解を深めていく方法である。競争ではなく協働学習である。
共通テストでは、記述式が導入され、知識・理解だけでなく、資料読解力や思考力・判断力・表現力を評価することになる。相対評価による学力評価を追求すると従来の競争試験に帰結すると考える。高校の学習内容の到達度を評価すべきである。
2019.7.25更新
「受験の日本史」では模範解答が準備されています。ここが「日本史」との違いと考えます。
模範解答は、検定教科書の記述であり、その記載は少し古い学会の定説ですが、「日本史」を学ぶ基礎となります。
「日本史」には模範解答は準備されておらず(あるいは解答が見方や追究方法により複数あり)、史料をもとに叙述ないし論述をすることで、定説は多くの場合更新されていきます。
記述式の入試問題を解く場合、出題者の模範解答が準備されているので、何を求められているのかを考え、解答の大枠をつかみます。
入試対策の基本は、授業と教科書と定期考査です。歴史的事象の基本的な理解をした上で、他の事象との関連や流れを掴む学習をすることが大切です。授業を大切にし、わからないところは先生に積極的に質問しましょう。
受験対策は、受験範囲の授業を早く終わる事と「過去問」を解くことが肝要です。「過去問」を解くには授業が終わっていなければなりません。
センター試験は高校の授業の評価ですから、授業と定期考査の積み重ねが基本です。しかし、日本史の場合、授業時間の制約で近現代史の授業時間が不足しがちで、課外は行われていますが問題演習の期間と時間が不足します。受験生は早めに教科書の予習をして準備をしておきましょう。
受験対策では、配点の多い国語・数学・英語が重視されます(特に標準偏差の高い(得点差のつく)英語・数学)。したがって普通科高校の教育課程は学校生活にゆとりのある1・2年でこれら3教科の単位を多くしています。このため地歴・公民科の単位は3年に偏る傾向があります。センター試験は1月ですから、3年では実質2学期までの授業時間しかありません。地歴科は教科書も厚いので問題演習や模試の範囲の対応ができにくい環境があります。
国語・数学・英語のセンター試験の授業内容は1・2年で終わっていますので、授業や課外で問題演習まで完了する本来の受験対策がしやすくなっています。また、英語・国語中心の文系に比べ、理系は数Ⅲや理科2科目(物理・化学)など個別試験(2次試験)の範囲が広く、授業や問題演習が3年の後半までかかることもあり、地歴科の準備は後回しになりがちです。授業を大切にし、出題範囲が狭い定期考査を完璧に準備し、見直しをしておくことで、全範囲学習となる受験の準備が遅くなることに備えておきましょう。
中高一貫校の利点は、中学3年社会科(公民的分野)と高校1年公民科(現代社会(次期の公共))の重複を調整したり、中学の地理・歴史的分野のレベルを上げたりして高校2年生までに授業を終え、高校3年生で問題演習の時間を作ることができるゆとりです。問題演習は合否をわけるので(授業を完了した予備校の1年間で得点力が飛躍的にアップすることが証拠です)、ゆとりをつくれる学校とつくれない学校が制度上存在していることは、受験の機会均等につながっていない面がありますが、どうにか工夫をしなければなりません。(公立と私立中高一貫の学力差は主に中学校の授業数・授業内容の格差にあるとみます。)
受験対策には、可能な限り1・2年での履修を増やすこと、授業内容の精選や補助プリントの配布により板書を少なくするなど進度を早めること(勧められませんが課外で授業をすることも)、問題演習(過去問等)まで終わってからセンター試験や個別学力検査に臨ませることが現役合格のために必要です。
また、大学進学をめざす生徒が多い高校で、「文武両道」の名のもとに、入学後まもない1年生の1学期に過剰な課外部活動をさせることは、学校の制度として禁止すべきです。高校生活の中心は学習にあるのですから、新入生のルーティーンがつくられる1学期の部活動は、たとえば17時までに制限して下校させる制度が必要です。部活動のほとんどは勝敗を争う競技なので、試合に出て勝つことが目標となります。1学期は地方大会や全国大会の予選が多く、指導者や上級生は勝つことをめざし、他校と同等かそれ以上の練習をしようとする傾向があります。このため練習時間に制限を加えないと1年生は大切な学習習慣を身につける機会を失います。部活動には良い面がたくさんありますが、新入生の過剰な練習時間は学習習慣の確立を損ね、ほとんどの生徒は本来発揮できる学力をつけることができなくなります。新入生の1学期の部活動の活動時間は制度として制限することが「文武両道」の実現に繋がると考えます。
高校は小・中と違い、学校の環境や生徒集団の個性に違いがあります。学校の実態に合わせ、生徒の志望を生かした受験対策を工夫しましょう。
2020.10.30 最終更新
直近の最新のセンター試験の問題の一部(史料問題のみ)と出題内容・出題形式、及び大学入学共通テスト試行調査の一部(朝日新聞掲載分)を解説しています。
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《参考》
「受験の日本史」の観点から「つかはらの日本史工房」(管理者塚原哲也・駿台予備学校講師)という完成度の高いサイトがあります。難易度の高い国立大学の個別試験(2次試験)で出題された記述式の過去問が学習できます。