New  令和6年大学入学共通テスト(第4回・本試験)日本史B(2024.1.13実施)分析・史料問題解説(生徒)

令和6年度(2024.1.13)第4回共通テスト 日本史B(本試験)分析・史料問題解説

1 地歴科B科目平均点

(1)2024年1月13日実施 第4回共通テスト(本試験)平均点   中間集計 地歴科

世界史B 60.28点  標準偏差 21.55

日本史B 56.27点  標準偏差 16.88

地理B  65.74点  標準偏差 15.04

(大学入試センター2024.2.5)

 

 おそらく、平均点のターゲットは60点と考える。日本史Bは良問を作成したが、世界史Bとは4点の差があり、難易度が相違している。

 地理Bの65.74点は、問題作成者の能力の欠如というしかない。日本史Bと10点近く差がでては、センターの得点のみによる合否決定をする大学・学部、あるいはセンターの配点の高い選考をする大学・学部においては致命的な差である。

 日本史Bの良問を問いて努力を実らせたものの、大学入試は、同じ学力の地理選択者が合格し、日本史Bを選択したために不合格になったという現実に受験生を直面させるという不公正が、共通一次試験以来、長期間放置されている。

 科目間で20点以上の平均点の差があれば大学入試センターは得点調整をする。平均点の差が大学入試センターの責任であり、受験生に不利益を与えることを認めている。なぜそれが20点なのか、実際には10点であり、5点ではないのか。科目間で2点以内の作問が可能なことは過去の地歴科平均点の事実が示している。大学入試センターの作問の失敗を、受験生の「運」として押し付け、その後の人生を変えさせてはならない。

 大学入試センターは社会的責任があり、反省だけではなく責任もとらなければならない。入試を公正に行うために、平均点の調整システムの構築を強く求める。

2024.2.6

 

2 令和6年度共通テスト日本史B(本試験)問題と解答

(1)第1問通史テーマ

 第1問は、テーマに沿った形で、原始・古代、中世、近世、近現代の全分野から出題される。

《今回のテーマ》

 ◇令和6年度第4回共通テスト本試験(2024.1.13)の第1問の通史のテーマ「印刷の歴史」 

 

《直近の日本史Bセンター試験・共通テスト本試験(及び第1日程)の第1問・通史のテーマ》

令和5年度第3回共通テスト本試験(2023.1.14)「地図から考える日本の歴史」日本の行政区画と辺境、東アジア情勢、作図の意図などを問う出題。

令和4年度第2回共通テスト本試験(2022.1.15)「姓・苗字(名字)・名前」

令和3年度第1回共通テスト第1日程(2021.1.16)「貨幣の歴史」

令和2年度センター試験(2020.1.18)「教育」

平成31年度センター試験(2019.1.19)「交流・外交」をテーマに、第1問で、近世までの地域、東アジア、蝦夷地との交流・外交に関する出題、第6問で日米外交史に関する出題という変則的な構成となっている。

平成30年度センター試験(2018.1.14)「観光」

 

《共通テスト試行調査第1問・通史のテーマ》

第2回試行調査(2018.11) 「土地開発と災害の歴史」 

第1回試行調査(2017.11) 18歳選挙権制の実現をふまえ「中世までの「会議」や「意思決定」の方法

2024. 1.22更新

 

(2)出題の構成(令和6年度・2024年度)

①時代別配点

第1問(18点)古代3点。中世5点。近世7.75点。近代2.25点。現代(戦後)0点

第2問(16点)原始(考古学中心・魏志倭人伝あり)3点。古代13点。

第3問(16点)中世16点。

第4問(16点)近世16点。

第5問(12点)近代(幕末含む)12点。

第6問(22点)近代13点・現代(戦後)9点。

全体 原始・古代19点(うち原始3点)。中世21点。近世23.75点。近現代36.25点(うち現代9点。現代は1972年まで出題)

 《令和5年度》の時代別配点{( )は令和4年度}

 原始・古代 21.25点。(19.75点

中世 21.25点。(21.25点

 近世 19.75点。(19.75

 近現代史【ペリー来航以後の幕末を含む】 37.75点。(39.25)。うち現代史【戦後】の問題 6点。1976年まで出題。 (10.5点。1987年まで出題)

 《共通テスト過去3年間の時代別配点の平均》

原始・古代20点。中世21.2点。近世21.1点。近現代37.75点(うち現代8.5点。平均1978年まで出題)

《過去3年の時代別配点の傾向》

〇時代別配点は原始・古代20点、中世20点、近世20点、近現代40点。

〇原始(考古学)は1問(3点)。

〇現代(戦後)は昭和まで(1989年)の出題。

時代別出題の割合に変化はない。戦後は昭和時代まで(1989年まで)の出題としているのではないか。

 

②分野別配点

政治経済・金融政策を含む】 古代10.33点 中世7.5点 近世3点 近現代7.5点 合計28.33点

外交 古代1.33点 中世2点 近世8.5点 近現代19点 合計30.8点

経済 古代 中世 近世7点 近現代3点 合計10点

社会 原始・古代4.33点 中世7点 近世 近現代 合計11.33点

文化 古代3点 中世4.5点 近世5.25点 近現代6.75点 合計19.5点

《令和5年度》( )は令和4年度

政治【経済・金融政策を含む】 24.5点。(25.75

 外交 24.25点。(22

 経済 12.25点 (15.25点)

社会 27点 (27.75点)

  文化 12点。(9.25点)

《共通テスト過去3年間の分野別配点の平均》

政治26.2点(経済・金融政策を含む)。外交25.7点。経済12.5点・社会22点。文化13.6点。

 

③出題方法・形式

《出題方法》

【地図】今年度は出題なし。地図に関しては、受験生の住居により不公平が生じることがある。

平城京(奈良県)と尾張国(愛知県)の地理的位置関係を問う問題はある。 

【史料】17。史料が増加。史料読解と歴史の基本的な理解を組み合わせて思考させる問題は、今後の史料問題作成の方向性を示していると考える。 

【資料】画像3と木簡の画像2の5画像。円グラフ1。表1。

 

《出題形式》

[組み合わせ完成法]3。

[正誤法]6(正しいものを選択4。誤っているものを選択2)・・誤っているものを選ぶ方が答えやすい。正しいものの選択は平均点調整のためであろうか。

[組合せ法]8。

[組合せ・正誤法]9。共通テストで中心になっている出題形式。難易度は高くなる。

[年代序列]6。うち完成式の年代序列1。3つの歴史的事象の年代序列は共通テストの定番となった。歴史的思考力により回答させる作問が求められ、年代暗記の学習方法で回答できる作問は避けるべきである。

 2024.1.22更新

 

(3)史料問題解説(2024年度本試験史料問題)

《出題の傾向》

〇史料問題が増えた。今後の出題傾向を示していると考える。

3つの史料から、6択で正解を求める問題が2問出題されている。

〇史料問題は、史料読解と歴史の基本的な理解を複合させて思考させる出題がほとんどで、今後の出題傾向を示していると考える。 


第1問

3 解答番号3 正誤・組み合わせ

X・・誤  Y・・正

正解④

X 「六角氏が治める近江国・美濃国には楽市令が出され」は誤り。史料1から観音寺城の城下町の「石寺新市」は楽市であった。しかし、美濃国・近江国では座人以外の商売は、「見合い荷物押さえ置」かれており、座の特権を認めている。

 

標準。史料読解により解答できる。 

 


問6 解答番号6 正誤問題

a・・正  b・・誤  c・・誤  d・・正

正解②

b 史料3に「印本はなはだ少なし。ただ『群書類従』ありて」とあるので、bの「『群書類従』のほかにも歴史書編纂の参考とすべき良書が広まっていた」は誤り。

c 円本・文庫本の大衆文化は、大正時代のこと。

 

標準。史料読解と大衆文化が主に大正時代の文化であるという基本的な歴史理解で解答できる。 

 


2

2 解答番号8 正誤組み合わせ

a・・正  b・・誤  c・・正  d・・誤

正解①

b 女子に調の負担はない。

d 尾張、若狭の大部分、紀伊の一部は都の東側に位置する。

 

標準。歴史・地理の基本的な理解で解答できる。「尾張」が現在の愛知県で、奈良の都の東側にあることは基礎知識。

 


3 解答番号10 正誤()

正解③

③ 「蘇の貢納期限が守られていた」とあるが、史料2には「ただし蘇なし。これ、西海道いまだ献ぜざるによる」とあり、貢納期限が守られていないことがわかる。

 

標準。史料読解により解答できる。 

 


3

2 解答番号13 正誤・組み合わせ

a・・誤  b・・正  c・・正  d・・誤

正解 ③

a 「本主がだれであっても」ではなく、bの「本主が御家人であれば」が正しい。

d 「史料1の規定に基づき」ではなく、cの「史料1の規定を読み換え」が正しい。

 

難。史料2では下久世荘の名主・百姓が永仁の徳政令の条文を読み換えて、不当な訴訟として棄却を求めている。aとbの文、cとdの文は対応しているので、文の相違箇所について考えて解答する。

 


4 解答番号15 組み合わせ・6択

史料3・・『朝倉英林壁書(えいりんかべがき『朝倉孝景条々』)』家臣の築城禁止と一乗谷集住。史料4・・『今川仮名目録』家臣の他国との私的婚姻の禁止。史料5・・『甲州法度之次第』家臣の喧嘩両成敗。
X
・・史料2 Y・・史料3

正解④

 

標準。教科書にも記載されている分国法の基本史料である。

 


4

4 解答番号20 正誤()

     誤 ②誤 ③誤 ④正

正解④

     「鎖国」状況で外国と貿易ができた藩は薩摩藩(島津氏)と対馬藩(宗氏)のみ。

     「幕府は砂糖の専売制を改め」たことはない。砂糖専売は薩摩藩が実施。

     「薩摩から琉球へ」ではなく、「琉球から薩摩へ」である。

     「正」

 

やや難。授業で詳しく取り扱わない砂糖に関する史料であり、史料読解も難しい。

 


5 解答番号21 正誤・組み合わせ

a・・誤  b・・正  c・・正  d・・誤

正解③

a 「昔は農業の片手間に女性が蚕飼をして、糸を取り織物で生計をたてていた」のであり、「江戸時代初期から織物を専業とする者が集住していた」わけではない。
d
 この地域の織物業が盛んになったのは、史料2が作成された1835年の約50年前の1785年ころからである。新たな定免法による年貢増長策は8代将軍徳川吉宗の享保の改革の時で、1719年からである。

 

標準。史料読解と享保の改革の基礎的な理解で解答できる。

 


5

3 解答番号24 正誤()

a・・誤  b・・誤  c・・誤  d・・正

正解④

a 当初、正貨との兌換が義務付けられていた。明治9年にこの義務が廃止され、多くの国立銀行が設立された。

b 「第一国立銀行だけ」は誤り。
c
 三井組と小野組が出資して設立したのが第一国立銀行である。

 

標準。当初、国立銀行は兌換券の発行を義務付けられていたため設立が困難だったという歴史理解と史料読解で解答できる。

 


6

1 解答番号26 組み合わせ・6択

史料1・・1905年『第二回日英同盟協約』第二条。史料2・・1919年『国際連盟規約』。史料3・・『ワシントン海軍軍縮条約』第三条。
X
・・史料3(主力艦建造制限) Y・・史料1(日英同盟)の廃棄

正解⑤

標準。史料1が日英同盟であると判断するのはやや難しいものの、ワシントン会議で廃棄された条約という歴史の基本的理解から、史料1が日英同盟であることは類推できる。 

 


3 解答番号28 正誤組み合わせ

X・・誤  Y・・正

正解③

X 史料4には「関東軍の行動に制限を加え」たことは記載されていない。

 

標準。政府は関東軍の行動を止めることができなかったという歴史の基本的な理解と史料読解により解答できる。

2024.1.24