令和4年度(2022年度)4月に入学した高校1年生から新学習指導要領が年次進行で実施されます。新学習指導要領は、「アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)」の授業が実施され、思考力・判断力・表現力が重視されます。
これに伴い、令和4年度入学生の大学入試となる平成7年度(2025年度)入試(平成7年1月実施)から、新学習指導要領にもとづく大学入試共通テストが実施されます。これまでの入試問題の蓄積の上に、これまで以上に思考力・判断力・表現力が問われる入試問題が作成されます。
大学入試センターは、2022年11月9日に令和7年度大学入学共通テストの試作問題を公表しました。今後、新学習指導要領による『日本史研究』『歴史総合』の入試問題が作成されます。このページではこの動きを更新していきます。
2022.11.10
新学習指導要領を反映した出題になります。
共通一次・センター試験・共通テストの最大の課題は得点調整です。得点調整の改革を求めます。
2022.11.10
『歴史総合、日本史探究』の試作問題と正解表です。
解説はいましばらくお待ちください。
2023.2.11
令和7年度の試作問題は、問題が6問、設問が34問(3点32問・2点2問)となっており、問題数は令和5年度までの共通テストと比べるとやや多くなっている。これは、解答時間の不足に繋がり、平均点を下げる要素となる。逆に、組合せ完成法を増やして出題形式をシンプル化するとともに、正誤法において、誤りの文章を選ぶ問題を増加させて平均点を上げることでバランスを取っている(正誤法で「次の①~④の中から正しい文を選べ」などの正しい文を選ぶ設問は、誤りを1つ見つけるのではなく誤りを3つ見つけなければならないので回答が困難となり回答率が低くなる。)。
構成上の最大の変化は、第1問が近現代史の「歴史総合」(9問25点)となっていることである。日本史と世界史の関連を総合的に問う問題となっており、共通テスト「日本史B」と比べて近現代史の出題の割合が高くなり、特に戦後史(現代)の割合が倍増している。それに伴って、前近代(古代・中世・近世)の割合は各時代とも漸減しているが、各時代の割合のバランスはとれている。
従来の共通一次・センター試験・共通テストの日本史・日本史Bでは、第1問がテーマ史で、全時代からの出題であったが、試作問題では第2問がテーマによる全時代史となり、第3問が古代史、第4問が中世史(一部近世史)、第5問が近世史、第6問が近現代史となっている。配点は、世界史と連関した「歴史総合」が25%、「日本史B」に当たる「日本史探究」が75%の割合となっている。
2023.2.22
時代別配点(100点中)
《試作問題》
第1問(9問。25点{7問3点・2問2点})歴史総合。近現代史(現代{戦後}9.5点)
第2問(5問。15点)全時代テーマ史(「学びの歴史」)古代2.25点。中世2.25点。近世3.75点。近現代6.75点(現代1.5点)。
第3問(5問。15点)古代15点。
第4問(5問。15点)中世13.5点。近世1.5点。
第5問(5問。15点)近世15点。
第6問(5問。25点)近現代15点(現代5.25点)。
全体 古代17.25点。中世15.75点。近世20.25点。近現代46.75点(うち現代16.25点。現代は1980年代まで出題)
《共通テスト過去3年間(2021~2023年)の時代別配点の平均》
原始(考古学)・古代22.83点(うち原始1点)。中世18.92点。近世19.75点。近現代38.5点(うち現代6.75点。1987年まで出題)
試作問題では、歴史総合の導入により、近現代史(特に現代)の割合が高くなっている。
②分野別配点
《試作問題》
政治12.75点。外交14点。経済19.25点。社会31点。文化23点。
《共通テスト過去3年間(2021~2023年)の分野別配点の平均》
政治29.75点。外交18.25点。経済・社会40.08点。文化11.92点。
試作問題では、政治・外交の割合が減り、経済・社会と文化の割合が増えている。
③出題形式
《試作問題・出題形式》
[正誤法]正しいもの(適切なもの)を選択・・8問。
誤っているものを選択・・6問。
[組合せ正誤法]11問。
[組合せ完成法]7問。
[年代序列]2問。
《令和5年度・出題形式》
[正誤法]正しいもの(適切なもの)を選択・・6問。
誤っているものを選択・・1問。
[組合せ正誤法]12問。
[組合せ法]7問。
[組合せ完成法]1問。
[年代序列]5問。
試作問題では、[正誤法]が増えて「誤っているもの」を選択する問題が多い(平均点は上がる)。令和5年の[組合せ法]は、試作問題では[組合せ完成法]に変わっている。試作問題では、年代序列が減っている。[組合せ正誤法]が出題の中心であることは変わらない。
④資料問題
【史料】10(近世以前5。近現代5)。
【地図】3。
【統計表】3。
【絵画】3。
【写真】2。
【年表】1。
試作問題では、史料を10点使っているが、歴史学の性格上、史料を出題することは、やむを得ない。近世以前の古文書は、原史料4点(木簡、『御成敗式目』「女人養子の事」、「北条泰時書状」、江戸幕府の米価法定)、現代語訳1点(湯島聖堂図の説明書き)であり、原資料には「北条泰時書状」を除き、解説や註がついており、読解は難しくない。近現代の史料は現代文で記述されていて読解は容易である。史料問題は、これまでの出題と比較すると、読解の負担を軽減する意図がみられる。ただし、資料全体の使用数は、これまでの共通テストに比べやや多い。
2023.3.3更新
(1)共通テスト問題作成方針
①令和5・6年度入試の方針
〇センター試験・共通テストの良問の蓄積を生かしつつ、大学入学時にどのような力を身に付けていることを求めるかを明確にした問題作成。
〇大学教育の基礎力となる知識・技能や思考力・判断力・表現力を問う問題作成。
〇「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定。高校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けたメッセージ性を考慮し、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。「授業において生徒が学習する場面」「社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面」「資料やデータ等を基に考察する場面」など。
②令和5・6年度日本史Bの問題作成方針
〇歴史的事象を多面的・多角的に考察する過程を重視する。
〇知識のみならず、歴史的事象の意味や意義、特色や相互の関連性について総合的に考察する力を求める。
〇問題作成例・・教科書で扱われていない初見資料から得られる知識と授業で学んだ知識を関連付ける問題。仮説を立て、資料に基づいて根拠を示して検証する問題。歴史の展開の考察、時代・地域を超えて特定のテーマについて考察する問題など。
③令和7年度入試の検討の方向性
〇これまでの共通テストの問題作成方針を重視し、その趣旨を明確化する。
〇新学習指導要領と平成6年度までの実施状況を踏まえる。
〇各大学が実施する試験等との組み合わせで、大学教育を受けるためにふさわしい能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価判定する。
・新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を通して育成する、深い理解を伴った知識の質を問う問題、知識や技能を活用し、思考力・判断力・表現力等を発揮していくことが求められる問題を重視する。その際、言語能力、情報活用力、問題発見・解決能力等を教科横断的に育成する。
・「社会や日常の中から課題を発見し解決方法を構想する場面」「資料やデータ等を基に考察する場面」「考察したことを整理して表現しようとする場面」などを設定することにより、探究的に学んだり協働的に課題に取り組んだり過程を、問題作成に効果的に取り入れる。
2023.2.22
(1)問題発見、探究・解決方法、資料・データの活用
①第1問 問9 問題番号9
「さらに探究するための課題」。「あ」太平洋をまたいだ経済の結びつきと社会への影響・「い」海外に移住した沖縄県出身者と移住先の社会との関係について、探究すするために適当と考えられる資料を「W~Z」から選択させる問題。
「あ」については、「W」アメリカの日本からの自動車輸入台数に関する新聞記事・「X」APEC参加国のGDP統計からの選択。「い」については、「Y」移住のための交通手段と移住にかかった費用のデータ・「Z」移住先の国籍取得条件と、移住先で国籍を取得した沖縄県出身者の概数からの選択。
②第6問 問4 問題番号33
第二次世界大戦直後の写真への「疑問」。「あ」日本の警察官と占領軍の憲兵がなぜ同時に交通整理をしているのか・「い」「どうして馬車で、なぜ丸太を運んでいるのか」という疑問を検証する方法。
「あ」については、「W」マッカーサーの統治のあり方を、α市の実態に即して具体的に調査・「X」日米行政協定の実施のあり方をα市の実態に即して具体的に調査からの選択。「い」については、「Y」道路の舗装程度、α市と周辺の公職追放の程度・「Z」トラックなどの使用程度、α市と周辺の空襲被害の程度の調査からの選択。
(2)疑問と探究
③第3問 問1 解答番号15
木簡と畿内の地図からの【疑問点】物品の売買・流通と交通路の関係。藤原京の立地条件。
「あ」海石榴市・初瀬川・難波宮の地理的位置関係、「い」水運に利用される河川の水系に関する記載内容の正誤。
④第3問 問2 解答番号16・17
【疑問点】渡来人の子孫が律令制下で役人として活躍した経緯、役所の糸が藤原京にもたらされた経緯、役所が糸を売って入手していたものの探究。
解答番号16は渡来人のもたらした文化に関する年代序列。
解答番号17は糸の売買に関する意見で適切なものを選択。
⑤第3問 問3 解答番号18
藤原宮・平安宮の門と唐風化
【疑問点】藤原京以降の唐風化の進展はどのようなものかを考える。
「あ」橘逸勢の書いた門の額。「い」平安京の鴻臚館。
「あ」については、「W」唐風書の能書家である三筆・「X」大仏様建築様式からの選択。「い」については、「Y」渤海使節と漢詩・「Z」高句麗使節からの選択。
2023.2.22