文科省は、英語民間試験、国語・数学記述式を導入し、2020年度、令和3年(2021年1月16日・17日実施予定)からはじまる大学入学共通テストの実施大綱案を発表しました。
記述式の導入に伴い、「国語」が100分(20分延長)、「数学Ⅰ」、「数学Ⅰ・数学A」が70分(10分延長)とし、英語では、「読む」・「聞く」に、「書く」・「話す」を加えた民間試験が実施すると発表した。しかし、英語民間試験の導入と国語・数学の記述式導入は延期されました。
このページでは計画から延期、見送りに至る経過を紹介します。
2020.10.2更新
2020年度(2021年1月16・17日実施)からはじまる大学入学共通テストに関する大学入試センターの説明会が全国6地区で実施されます。7月4日に、関東・甲信越地区から説明会がはじまり、夏以降生徒への説明が行われます。
当HPは日本史をテーマにしているので、英語を専門的に扱っているわけではありません。
しかし、共通テストに関しては当面の課題が指摘されており、特に英語民間試験に関する課題に関心が高まっています。以下では、英語民間試験の動向について紹介します。
共通テスト英語民間試験は、日本英語検定協会の「新型英検」とベネッセコーポレーションの「大学入学共通テスト版」GTECに受検生が集中するとみられます。
ベネッセは、進研模試やセンター試験自己採点などで、高校の進路指導の現場と深い結びつきがあり、データも正確で信頼を得ている。公正性の課題を克服すれば、地域の高校でも実施可能で、複数回(2020年6~11月4回。2回まで受検可能)受検できるGTECは共通テストの中心的役割を担うとみられる。2019.8.27
TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は2019年7月2日、2020年度(2021年1月実施)から「大学入試センター試験」に替わり実施される「大学入学共通テスト」への参加申し込みを取り下げると発表した。
共通テストが課題を抱えていることをアナウンスしたことになり、大学入試センターには痛手である。
中国地区にはTOEICの会場が16カ所あり、山口県内にも東部、中部、西部に3カ所ある。それに対し、TOEFLの会場は中国地区で広島市のみである。
(2019.7.8更新)
文部科学省は2019年8月27日、2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間試験の情報をまとめたポータルサイトを開設した。(2019.8.28更新)
「大学入試英語成績提供システム」での民間試験の導入は延期されたが、各大学が独自に民間試験を活用すこは可能としている。(2019.12.17)
2019年7月25日全国高校長協会は、「試験の周知に計画性がなく、詳細が明確になっていない」などとして、不安を解消するよう、文部科学省に申し入れた。全国の校長から「実施を見送るべきだ」といった声が寄せられ、要請を決めたという(朝日新聞2019.7.26)。
課題は、受検生の経済負担、受検機会の地域格差、複数の民間試験の公平性が中心になっている。
朝日新聞は2019年9月16日1面で英語民間試験導入の課題を取り上げた。
とはいえ、高校・大学側双方に授業改革・入試改革をすることへの不安はあるだろうが、国際的にみても、一刻も早く勇気を持って改革に取り組まなければならない時期に来ていることも事実である。
文科省は、やみくもに実施するのではなく、受験生の不安をなくする施策をして公正な技能検定を実施するべきだ。また、教員・ALTの増員、部活動削減などの教員負担の軽減、少人数学級の実現のための予算の増加などの環境整備に努めなければ、負担のみ増える入試改革に対する高校・大学側の協力は得られないと考える。
また、根本的な問題として、OECD(先進国が加盟)35か国において、GDPのうち小学校から大学までの教育機関に対する公的支出の割合が最下位が続いている実態がある(平均4%。日本2.9%)。
特に高校までと桁違いの教育費のかかる大学進学の経済的負担が大きく、教育の機会均等が損なわれている(大学などの高等教育機関の日本の家庭負担率は53%)。
OECDのアンドレアス・シュライヒャー 教育・スキル局長は、「日本は従来から教育への支出が低いのに、成果もあげており効率的な投資だとはいえる。しかし私費に教育が依存すると経済的に苦しい人が質の高い教育を受けられないおそれがあり、持続可能性に懸念が残る」と課題を指摘している(NHK2019.9.15)。
私費に教育が依存すると経済的に苦しい人が質の高い教育を受けられないおそれがあり、持続可能性に懸念が残る」と指摘しています。
本人の能力ではなく、住んでいる地域や、親の経済力によって大学進学と生涯所得が決まる社会はただちに変革しなければならない課題である。
以下のボタンは、民間試験実施に関する課題を指摘するウェブにリンクします。
《東北大学》
東北大学は2021年度入試の英語民間試験(2020年度実施)と共通テスト国語記述式の導入を見送った代表的な大学です。次のボタンをクリックすると東北大学の見送りの理由(英語民間試験と共通テスト国語記述式の課題)の説明があります。
各民間試験間の公平性、地域による受検機会の差、経済的負担など英語民間試験の課題は山積しています。国立大学協会が2021年度入試(2021年1月実施)からの導入をめざしていることや民間試験の導入を見送る大学があっても他の大学も受験する場合が多いことを考慮すれば、受験生は2020年度に英語民間試験を受検しなければならなくなります。
東北大学等の見送りする大学からの志望変更も考えられますので、英語民間試験の受験対策は早めにしておかなければなりません。また、国立大学の多くは旧帝大系と比較して予算規模や教官数に制約があり、民間試験の活用をせざるを得ない実情があると考えられます。
東大等も完全な見送りから玉虫色に変更しています。英語民間試験は受けなければならないと考えるべきです。万全の準備をしておく必要があると考えます。
次のボタンをクリック
《英語民間試験実施延期、国語・数学記述式実施見送り》
萩生田文科相は、2020年度の大学入学共通テスト(2021年1月実施)に導入予定だった英語民間試験(2020年に受験)の実施延期(2019.11.1)、国語・数学の記述式の見送り(2019.12.17)を発表した。(2019.12.17)
文科省英語民間試験延期発表(2019.11.1)
「受験生をはじめとした高校生、保護者の皆様へ
文部科学大臣の萩生田光一です。皆様に、令和2年度の大学入試における英語
民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることを
お伝えします。
大学入試における英語民間試験に向けて、今日まで熱心に勉強に取り組んで
いる高校生も多いと思います。今回の決定でそうした皆様との約束を果たせな
くなってしまったことを、大変申し訳なく思います。
英語民間試験を予定通り実施するかどうかに関しては、高校生をはじめ多く
の皆様から、賛成・反対、様々な意見をいただいてきました。
私としては、目標の大学に向けて英語試験の勉強を重ねている高校生の姿を
思い浮かべながら、当初の予定通りのスケジュールで試験を実施するために、連
日取り組んできました。
しかし、大変残念ですが、英語教育充実のために導入を予定してきた英語民間
試験を、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けら
れるようにするためには、更なる時間が必要だと判断するに至りました。
大学入試における新たな英語試験については、新学習指導要領が適用される
令和6年度に実施する試験から導入することとし、今後一年を目途に検討し、結
論を出すこととします。
皆様が安心して、受験に臨むことができる仕組みを構築していくことをお約
束します。
今回、文部科学省としてシステムの導入見送りを決めましたが、高校生にとっ
て、読む・聞く・話す・書くといった英語4技能をバランスよく身に付け、伸ば
すことが大切なことには変わりがありません。
グローバル化が進展する中で、英語によるコミュニケーション能力を身に付
けることは大変重要なことです。皆様には、これからも日々の授業を大切にする
とともに、それぞれの目標に向かって努力を積み重ねて頂きたいと思います。
令和元年11月1日
文部科学大臣 萩生田光一」出典:文科省HP「大臣メッセージ(英語民間試験について)」2019.11.1
来年度からの共通テストで英語民間試験の導入の延期が発表された。英語民間試験の導入は、新学習指導要領実施後の令和6年度(2024年度)からとなる。
英語民間試験の導入には公正さ、地域格差、家庭の経済的負担などから、教育や受験の機会均等を損なう点が指摘され、全国高校長会(公立)が文科省に延期を申し入れていた。
現在の英語教育の持つ不備な点を改革する導入であったが、準備不足が露呈した。改革は1年でも早く実施すべきと考えるが、萩生田文科相が、不備な点や家庭の経済事情により教育の機会均等が損なわれ点があることを、受験生は「身の丈に合った」受験をすべきだという発言で肯定したことで文科省は窮地に陥り、11月1日の延期発表に帰結した。
結果的に、「読む、聞く、話す、書く」という4技能の導入が4年間遅れることになり、すでに不備な点のある英語教育の抜本的改革が4年も遅れるという、文科省の大失態となった。
これだけの改革をするのに、これまで文科省は何をしてきたのであろうか。文科省が長期間と費用がかかる問題作成の研究をせずに、既存の民間試験に安易に頼ろうとしたことに問題があった。
歴史的失政であり、文科省の責任は重すぎる。
管理者2019.11.1
2022年度から始まる新高校学習指導要領に基づく共通テストは2024年度(2025年1月実施)から始まる。今年度(2020年度・2023年1月実施)から始まる共通テストでは、当初英語民間試験の導入が計画されていたが延期となった。
新学習指導要領の「読む・聞く・話す・書く」の4技能の育成に基づき実施される2024年度共通テストでの民間試験の実施が注目されたが、「引き続きリーディングとリスニング」となった。(『朝日新聞』2020.10.22)
2020.10.22更新
英語民間試験の2024年度への延期が決定した後、2020年度(2021年1月実施)の国語・数学の記述式導入の問題点が指摘され、マスコミが取り上げている。
採点を落札した民間のベネッセが問題を事前に知り得ることや、特に国語で、採点の公平性を確保しにくいこと、自己採点のむつかしさなどが指摘されている。また、記述式は各大学の2次試験で実施すべきという意見などが出ている。
管理者が理解できないのは、なぜ地歴・公民、理科の記述式導入が、新学習指導要領で高校に入学した生徒の大学入試が実施される2024年度になっているかである。準備が整わないためと考えるが、それではなぜ、国語・数学は準備ができて実施可能なのかという点が理解しにくい。
すべての科目で2024年度から記述式を導入すること、予算を増やして国が責任を持って実施できる体制の整備に取り組むべきではなかろうか。
萩生田文部科学大臣は、閣議後記者会見し、2020年度からはじまる大学入学共通テスト(2021年1月実施)の国語・数学の記述式導入の見送りを発表した。
大学入試センターが独自の採点を行うための採点者の確保、予算、準備期間がすべて不足し、記述式の採点をベネッセに「丸投げ」せざるを得なかったことが延期の原因である。
英語民間試験の導入延期に続き、高校生を中心に多大な混乱を引き起こした文科相・文科省の責任は重い。(2019.12.17)