大学入学共通テスト日本史B(2021.1.16実施)の評価

 2021年(R3)1月実施入試から大学入学共通テストとなります。新学習指導要領に基づく、記述式を導入した「歴史総合」「日本史探究」の入試は2024年度(2025年1月実施)からです。したがって現行の「日本史A」「日本史B」の当面の出題方針は、現行学習指導要領に基づき、センター試験の出題内容と方法の上に、さらに工夫を加えて新学習指導要領のめざす思考力・判断力を意識した問題作成がされると考えます。

 今後、ページの更新を進めていきたいと考えています。

 新学習指導による2024(R6)年度入試(2025年1月実施)では、「歴史総合」と「日本史探究」の組み合わせで1科目となることが予定されています。また、2024年度からは記述式も導入される予定になっています。

2020.10.22最終更新

令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学テスト問題作成方針 令和2年(2020)6月30日 大学入試センター

第1 問題作成の基本的な考え方

 「高等学校(中等教育学校及び特別支援学校高等部を含む。以下同じ。)の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握することを目的としている。」

○「大学入試センター試験における良問の蓄積を受け継ぎつつ、高等学校教育を通じて大学教育の入口段階までにどのような力を身に付けていることを求めるかをより明確にしながら問題を作成する。」

○「平成21年告示高等学校学習指導要領(以下「高等学校学習指導要領」という。)において育成することを目指す資質・能力を踏まえ、知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する

 また、問題作成のねらいとして問いたい力が、高等学校教育の指導のねらいとする力や大学教育の入口段階で共通に求められる力を踏まえたものとなるよう、出題教科・科目において問いたい思考力、判断力、表現力を明確にした上で問題を作成する。」

○「高等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し、授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等を基に考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。」

 

第2 出題教科・科目の出題方法、問題作成のねらい、範囲・内容等

「高等学校学習指導要領に基づく学習範囲の中から出題されるという点については、令和2年度大学入学者選抜に係る大学入試センター試験と変更はないことから、過年度卒業者用の別問題は作成しない。」

○「高等学校学習指導要領に準拠するとともに、高等学校学習指導要領解説及び高等学校で使用されている教科書を基礎とし、特定の事項や分野に偏りが生じないように留意する。」

 「教科書等で扱われていない資料等も扱う場合がある。

○「問題の分量は試験時間に応じた適切なものとなるように配慮する。」

 「選択科目間及び科目内選択問題間の平均得点率に著しい差が生じないように配慮する。」

○「問題作成における問いかけの在り方や資料の提示の仕方、レイアウトの工夫等について配慮する。」

 

第4 マーク式問題の新たな出題形式

○マーク式問題の新たな出題形式として、いわゆる連動型の問題(連続する複数の問いにおいて、前問の答えとその後の問いの答えを組み合わせて解答させ、正答となる組合せが複数ある形式)を「第2」に示す問題作成のねらい、範囲・内容等を踏まえて、出題する場合がある。

 

(別添)出題教科・科目の問題作成の方針

歴史(世界史A、世界史B、日本史A、日本史B)

○「歴史に関わる事象を多面的・多角的に考察する過程を重視する。用語などを含めた個別の事実等に関する知識のみならず、歴史的事象の意味や意義、特色や相互の関連等について、総合的に考察する力を求める。問題の作成に当たっては、事象に関する深い理解に基づいて、例えば、教科書等で扱われていない初見の資料であっても、そこから得られる情報と授業で学んだ知識を関連付ける問題、仮説を立て、資料に基づいて根拠を示したり、検証したりする問題や、歴史の展開を考察したり、時代や地域を超えて特定のテーマについて考察したりする問題を含めて検討する。」

 2020.11.13

 

令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項(2020.6.30)大学入試センター

一部を抜粋。太字・赤字は管理者によるものです。

1実施の趣旨等

(1)「高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。)の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握することを目的として」

(2)「大学共通テストでは、各教科・科目の特質に応じ、知識・技能のみならず、思考力・判断力・表現力等も重視して評価を行うものとする。」

3出題教科・科目等

(1)大学入学共通テストの出題は、高等学校学習指導要領に準拠して行う

(3)大学入学共通テストは、主として多肢選択による客観式の検査方法により出題し、解答はマーク式とする。

12得点の調整

(1)「次の各科目間で、原則として、20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には、得点調整を行う。

 ただし、受験者数が1万人未満であった科目は得点調整の対象としない。」

 ①地理歴史の「世界史B」、「日本史B」、「地理B」の間

 ②公民の「現代社会」、「倫理」、「政治・経済」の間

 ③理科のグループ②の「物理」、「化学」、「生物」、「地学」の間

(2)「令和3年1月16日(土)及び17日(日)に実施する試験と令和3年1月30日(土)及び31日(日)に実施する試験の間では、得点の調整は行わない。」

別紙

「世界史A」と「世界史B」、「日本史A」と「日本史B」、「地理A」と「地理B」、「倫理」と『倫理、政治・経済』及び「政治・経済」と『倫理、政治・経済』の組合せで2科目を選択することはできない。

2020.11.13

 

共通テスト日本史B(2021年1月実施)の出題の方向性に関するHP管理者の検討

○現行の学習指導要領に準拠して問題作成が行われるため、最近のセンター試験の出題内容と大きな変化はないであろう。しかし、試行調査から見て、出題方法、出題形式は大きく変わると推察する。

○受験時間は60分でセンター試験と変わらない。問題数は過去3年のセンター試験が36問、2回目の共通テスト試行調査が36問(1回目は31問)である。このため36問の可能性が高いが、出題方法、出題形式が変更されることを考慮すれば、センターと同じ問題数では時間不足が生じることを危惧する。

 管理者は、第1回試行調査の31問(1問2分)とし、1問3点(一部4点)とする方が適切と考える。資料を読み取り、学習してきた知識とあわせて総合的に考察し、問題文の正誤を判断し、組合せ式で解答する問題が多く、センター以上に解答に要する時間がかかる。頭の回転が早い受験生は対応できるだろうが、じっくり考えるタイプの受験生は時間不足になると推察する。

 大学の研究には頭の回転のスピードだけでなく、じっくり考える能力が必要と考えるからである。

○「特定の事項や分野に偏りが生じないように」とあり、センターと同様、第1問がテーマ問題による全時代通史、第2問が原始・古代史、第3問が中世史、第4問が近世史、第5・6問が幕末以降の近現代史の各時代からの問題となり、政治、外交、経済・社会、文化の各分野からバランスよく出題されるであろう。

○コロナにより3年生の授業時数が少なくなっているため、コロナ対策として、第1日程では現代(戦後)の出題は最小限に止められると推察する。

○第2回試行調査が平均得点率(平均正答率)を50程度としており、平均点60点程度のセンターと比較して難易度が高くなると推察する。すなわち、センターの問題は歴史的思考力が必要な良問が多かったが、より高度な総合的な知識・理解力と思考力が求められる。また、出題の方法・形式が複雑になっており、時間不足に陥らないよう、受験時の時間配分に注意が必要と考える。

○高大連携の観点から授業方法の改善が求められるようになり、その方向性(「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング))を考慮した出題がされるであろう。出題方法、出題形式、問い方において、センター試験と大きな差が出ることが推察される。

○授業方法の改善の方向性から、資料(史料、書画、写真等)、地図、年表など初見の資料が多用され、それを読解する技能が求められ、授業で学んだ知識・理解と初見資料を総合的に思考、判断する力が求められる。ただし、初見資料自体の知識を問う出題はないので、初見資料を恐れる必要はない。

○授業方法の改善の一環として博物館・文書館などの利用が求められているが、施設は地域によって差があるので出題は配慮されるだろう。また、地図に関する出題は、該当地域に当たるか否かで有利・不利が生じるので配慮されるであろう。

○センターの完成式の問題は語句を入れる形式であったが、試行調査ではほぼ文を入れる出題になっている。また、センターでも組み合わせ式の問題は多かったが、共通テスト試行調査では多くの問題が文章の正誤を判断し、さらに組み合わせて問う複雑な形式になっている。

○大学で学ぶために、共通テストで問われる主な「思考力」「判断力」は、歴史的事象の、①資料からの類推、②比較、③背景・原因・結果・影響に着目した相互のつながり、④推移や変化、⑤時系列、⑥接触・交流の作用、⑦歴史的意味・意義、⑧現代的課題に応用する力などである。

○共通テスト本試験が第1と第2日程で実施され、出題方法に工夫が必要なため、問題作成に大変な労力が必要である。このため、地歴科各科目の平均正答率(問題の難易度)に「著しい差」を生じさせないという困難な課題を克服できるか危惧する。管理者は各科目間の差が2~3ポイントまでが受験生に不利益を生じさせない限界と考える。

2020.11.22更新

 

難易度(平均点)の予想

「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」(大学入試センター2018.6.18)と実施後の試行調査の地歴科平均得点率(平均正答率)の評価。

 「2. 実施教科・科目等 (2)試行調査の趣旨と実施教科・科目(本年11月実施)」によれば、「平均得点率(平均正答率)については、5割程度として実施し検証する予定です。」としている。(地歴科の結果報告では平均得点率(平均点と一致)が平均正答率(難易度)よりやや高くなっている)

 2021年1月実施の共通テストでは、前記のように「選択科目間及び科目内選択問題間の平均得点率に著しい差が生じないように配慮する。」としている。したがって平均得点率(平均点)に差がでないように「世界史B」、「日本史B」、「地理B」の問題が作成されたはずである。

 目標得点率が50程度であるならば、センター試験(60程度)と比較してかなり難易度の高い問題作成が行われると推察できる。

 「5割程度」の目標を掲げた2018年11月の施行調査(プレテスト)の平均得点率(平均点)と平均正答率は以下の通りであった。

世界史B 平均得点率59.60 平均正答率59.24

日本史B 平均得点率54.57 平均正答率53.58

地理B  平均得点率61.46 平均正答率60.02

 日本史Bを除き、地歴科は50程度の難易度の問題作成に失敗している。世界史Bと地理Bは60程度であり、センター試験の難易度と変わらない。これでは日本史の受験者が不安になり、高校の授業の科目選択に影響が出てしまう。

 地歴科の問題で平均正答率に7ポイントの差(日本史と地理の比較)が生じていることは、問題の難易度に大きな差があることを示している。世・日・地の「著しい差」が何点の範囲なのかは具体的な数値は示しておらず、言い訳可能なあいまいな表現になっている。管理者は、センターに比べ平均点が下がるので、地歴科の科目間の平均正答率は2~3の差が限度で、これ以上は「著しい差」と考える。

 この数値を共通テスト実施後の管理者の評価基準とする。

2020.11.23更新 

 


令和3年度大学入学共通テスト 実施結果の概要2021.2.18(大学入試センターHP)

 地歴科と公民科の教科間、公民科・理科の科目間、第一日程と第二呈の教科・科目間で平均点に大きな差が出た。

 前期の「選択科目間及び科目内選択問題間の平均得点率に著しい差が生じないように配慮する。」という原則が守られていない。

 科目間に20点以上の差が出た場合得点調整が行われた。しかし、得点調整でも科目間の平均を2~3点に縮小することができず、15点の差がでており、得点調整は意味がない。

 今年はコロナ禍で、例年以上に国公立・私立の各大学・各学部において共通テストの得点のみによる合否決定が多くなっている。

 平均点の差が合否を決定する。大学入試センターの責任は重い。センター長は責任を取るべきである。

2021.2.21